ビジネスホテルと旅館

 ビジネスホテルなんて、あんなもの“牢獄だ”と、和風の宿の女将はののしるが、朝、たたき起こされて、風呂だ食事だとせかされるよりも、寝たいだけ寝させてくれるビジネスホテルのほうが気楽だと若者はいう。予約なしの一人旅は、まず泊めてもらえない。仲居にかしずかれての食事も気詰まり。
 第一、皿数が多すぎる。ほんとに食べたいものは、ほんのちょっぴり。まずいもの、いじくりまわした“えさ”がつぎつぎ並ぶ。
 おまけに、高い。チップというか、ポチ袋になにがしかを入れて、いつ、どういって渡せばいいのか。宿泊料の1割か3割か、サービス料はいただいておりますから、一切お気遣いありませぬようにと書いてあればいいが、なんだか請求されているような素振り、口ぶりに接するといやになる。
 安もんの客はお呼びじゃないということか。

     (嶽)   (1999年 大阪新聞より)

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