酷暑に想う

 酷暑に想う。私は中3の夏が第二次大戦の敗戦で、その直前の教練は爆弾をかかえて戦車に突進する訓練のみだった。
 戦争の悲惨さは語り尽くせないが、その中のひとつに山口県徳山湾に浮かぶ大津島の回天発射訓練基地跡と同記念館がある。人間魚雷による体当たり攻撃で起死回生を計った作戦で、若人145人が回天特別攻撃隊員としてこの島を出て南の海に散った。その遺墨遺品1500点が展示され、回天発射場跡もある。「19歳の命を祖国のために散らせます。お父さんお母さん悲しまないでください。今まで本当にありがとうございました。さようなら」「僕はまだ学業に励みたい。しかし祖国無くして何の励みぞ」戦争という狂気のるつぼの中とはいえ、血涙のにじむ手紙に胸張り裂ける。限りなく無念にして、さみしさ身にしむ旅である。平和無くして旅も無いことを改めて噛みしめる。

     (嶽)   (2001年 大阪新聞より)

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