究極は廃村への旅

 予約無用、料金無料、混雑皆無、自然豊富…世界一のテーマパークがどうの、豪華船での世界一周がどうのといっても、そんなのをいっぺんに吹っ飛ばしてしまうのが「廃村への旅」である。
 豪雪や交通不便などの理由で見捨てられたのが廃村だが、廃村側に言わせれば、頼んだわけでもないのに人間が勝手に踏み込んできておいて、なにをほざくのかというだろう。廃屋や鎮守の森、石仏や小川や周辺の山々はせいせいしており、空気は澄み切っている。荒畑に原種がえり野菜が生えていたのをちょうだいして、みそ汁をこしらえ、おにぎりを食べた。こんなに自然なところがまたとあろうか。
 人間の勝手で消え行く集落や街道への歴史や故郷や先祖への熱き想いを書き連ねた碑文に感涙とまらず。現代文明の是非に思いを巡らす。晩秋の少しマイナーな旅である。

     (嶽)   (1998年 大阪新聞より)

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