北海道の濃霧

 北海道は梅雨がないからと、梅雨の時期に行った。確かに湿気や蒸し暑さはない。が、特に釧路あたり、厚岸や根室周辺をぶらついていると悩まされたのは、濃霧である。
 これは生やさしいものではなく、一寸先も見えない。こういう日が何日も続くと、気持ちまでめいってくる。もちろん写真も撮れない。お手上げであるが、そこはよくしたもので、例えばペンションのオーナーも仕事ができないから、手仕事などしながら、ゆっくりと話ができる。多忙なときであったら、触れられない一面に触れられるので、あながち捨てたものじゃない。
 早めに居酒屋に入って、熱燗でいっぱいやり、地の魚をつつく。ボーと霧笛が聞こえると、カウンター内のおかみさんは「いやですね。寂しくなります」と言う。が、これもまた旅なのである。

     (嶽)   (2001年 大阪新聞より)

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