夕陽・朝日のまちづくりに当たって

「日本の夕陽・朝日百選のまち」の観光担当者の皆様へ

NPO法人 日本列島夕陽と朝日の郷づくり協会   理事長 二木賢治
副理事長 辻村和子

 「日本の夕陽・朝日百選」という制度がスタートしましたのが1999年11月11日でございます。そもそもの動機は、今から7年前に起きた「あのいまわしい神戸の少 年による連続殺傷事件」であります。皮肉にも神戸市をはじめ阪神地区はその前年 に阪神淡路大震災にあったばかりでありました。その被害の少なかった北部で起こったこの事件は全国の教育関係者はもちろん全ての大人たち、いや子供達にも大変な衝撃を与えました。

 この少年はなぜあのようないまわしい殺人行為を起こしたのでしょう。誰もが疑問に感じたことであります。しかし、未だこれらに対する因果関係は謎であります。当時、現在、当協会の顧問をしていただいている山折哲雄先生(京都にあります国立国際日本文化研究センター所長)との講演依頼やお話をさせていただいている中で、先生があの少年はひょっとすると「幼いときに、天然の感動に出会っていないのではないか‥‥」 とおっしゃったのであります。先生の言われる天然の感動とは『夕陽』であります。つまり、あの少年は幼いときに 「夕陽を見ていないのではないか」という仮説であります。その問題提起は私にとっては「大変なことを聞いてしまった。どうしよう?」夕陽は確かに人間にとってすばらしい感動を呼ぶということについては何の疑問もなく取り組んでいこうと考えていた矢先に、山折先生の一言は私に大変重要な一定の方向を示唆していました。

    A.全国の夕陽の名所探しへの決意
    そのときから「日本における夕陽の名所」を集めて、「現代人=日本の老若男女にすばらしい天然の感動を呼ぶ夕陽を見てもらおう!」と考えて、従来の思考を洗い直して「観光に哲学を‥‥」と訴えて次の取り組みを企画したわけです。それまでの『私の夕陽論』は『大阪出世タワー七巡り』という大阪府内の夕陽の名所と7つのタワーを結び付けた回廊型の名所巡りイベントキャンペーンとして企画、これは楽しいパロディ調の観光イベントの一種のツールでしかありませんでした。 そのような背景の中で皆様との出会いになりました。すべて道府県の観光部門と大阪事務所の関係者の方々のご協力により、全国の夕陽の名所探しに一生懸命に取り組みました。相当の覚悟で行いまして、小さな企業としてはできないことを目指して取り組んできました。

    B.お陰様で昨年(2002年)12月現在では 「夕陽百選のまち68カ所、朝日百選のまち9カ所」にそこでなぜこのようなことを申し上げるかといえば、昨年にも郵送させていただきました「夕陽・朝日のまちづくり」で若干指摘させていただいています「行政の行う観光振興と夕陽の名所づくり」について、今日、あらためてその意義などを申し上げ、皆様の取り組みが他の観光事業に比べて、より国民的であり町のお国自慢の目標となることをあらためて確認いただき、この夕陽・朝日の取り組みに確信をもって取り組んでいただきたいと思います。

    C.「一つの社会的意義のある観光事業」として、『まちの誇り』にもしていただきたいと考えるものです。
     その一例として、まちの幼稚園児が夕陽の名所を訪れて、園長先生から“夕陽の話を聞く”というイベントを行っている所もあります。子供達はやがて巣立っていきますが、町の将来を背負っています。そんな子供達にとって、この対策は、子供達自身の住むこの町に誇りがもてるという一つの光明を与えてくれるものです。つまり、天然の感動に接して[夕陽を見て]子供達は自然環境から人間の存在をどこかで感じることでしょう。

    D.人間は「天然の感動」からはじまって、次に「人間による感動」を感じるものです。本来、観光というものはこのような厳かな生活文化として人間に大きなエネルギーを与えるために存在し、活用される筋合いのものであります。
     この二つは大変重要な感動の幹線観光振興にとっては大切な基本的要素であります。 この町にすばらしい天然の感動を味わうことのできる名所があるということを知ることは、すばらしい町民を生むことにつながります。町の土地のイメージも良くなります。

    E.「住んでいて良かった」という地域にすることが観光振興の原点であります。その結果「住んでみたい」という地域になっていく 観光振興も住民が誇りに感じてくれなければ、何の意味ももたなくなります。
     これまでに何度も写真展開催などのご案内をさせていただいていますが、町民の方々にもご案内をお願いしたいと思います。昨年末に東京羽田空港で行いました『日本列島夕陽・朝日の旅展』は多くの方がご覧になり、珍しく遠方からも馳せ参じていただきました。 今月は場所を大阪に替えて1月28日から2月6日まで開催します。ぜひ、ご出展ください。
     また、当事務局発の『夕陽(朝日)の放送局』をホームページで立ち上げています。
     問い合わせが多いのはマスメディアです。取材の対象として位置付けています。観光客のニーズが、もう人工的な観光資源には飽きたという声がひじょうに多くなる一方で、天然の感動を求める志向が多くなっているということも一つの要因であります。この『夕陽の放送局』を利用して『夕陽・朝日のまちのPR』を展開してください。1月10日現在で、すでに11万件以上のアクセスがありました。  このレベルの話題ではきわめて多いという識者の見解です。
     この『夕陽の放送局』も本年1月20日より『月刊 夕陽(朝日)の放送局』として再編集してスタートします。どうかよろしくご利用ください。 前項で私の取り組みのそもそも論を、その動機からご理解いただけたと思います。

    .皆様の夕陽・朝日のまちおこしというのは観光の原点であります。
    「天然の感動を体験してもらおう」と企画されるものです。
     今、多くの観光人が天然の感動を求めて、世界中に出回っています。しかし、国内にもすばらしいものがたくさんあります。
     その一つが近くて遠い時間のかからない『夕陽の名所』であり、『朝日の名所』なのです。その天然の感動を全国の人達に伝えていただく発信基地におられる人達が皆様です。まさに「心の旅の受け入れ基地」とでもいえる立場におられるわけです。

    G.私からのお願いです。
     さまざまな問題がお在りだろうと思います。この夕陽・朝日の観光振興は、特別に意味のある観光振興事業であります。ぜひとも地域のためにも、『心の旅』のためにも「もっともっと夕陽・朝日の観光振興に力を注いでいただきたい」とお願い申し上げる次第です。
     今春にはNPO法人として再スタートする計画で進めています。検討中です。この話は初めてであります。この『夕陽・朝日』という問題は単なる観光事業に止まらず『環境問題』としても最大の課題を抱えた問題でもあります。さらには『教育問題』『福祉問題』『文化問題』などさまざまなテーマを抱えています。「夕陽はただやから‥‥金にならん」ゆえに「旅行企画にはしないんだ」という大手の旅行代理店の人達の声が聞こえます。真実の声であります。
     しかし、今求められているのは一方では『観光哲学という分野』、一方では『楽しくて楽しくて‥というエンターテイメントという分野』、この両極が求められています。大阪のUSJに行った高齢者が「疲れる‥‥」と言います。その後が悪いもう少し、徐々に感動を維持できれば良いのですが。例えば、大阪オリンピック招致予定だった会場には『新夕陽ケ丘』という小さな丘があります。そこにでも案内すれば感動は二度起こるというものです。このままでは‥‥二度と行かないという風景がよく見られます。お近くの観光地にもよくある例です。参考にしてみてください。
     これらの事業は儲かる民間事業ではありません。先にも申し上げましたが、これらの事業は経営的には成り立つものではありません。
     私も民間人でありますが、やや堅い分野の行政中心の文化観光振興を仕事として長年行ってきましたために、どうしても皆様とともにこのような天然の感動を与える『夕陽と朝日』の観光地の振興に力を入れたいと考えています。

     ぜひとも、ご一緒に力を併せて地域のためにも住民のためにも「誇りあるまちづくり」をしようではありませんか。今、そのために全力をあげて各地の名所のPRに取り組んでいます。ぜひともご支援ください。よろしくお願いします。

    各地でのお話にもうかがっています。「夕陽の講演」「まちおこし のあり方」など、私の話は基本的には町民の中に観光人をつくるこ とからのスタートです。ご縁がありましたら、講演会に呼んでくだされば幸いです。 今後ともよろしくお付き合いをお願いしたいと思います。

    NPO法人 日本列島夕陽と朝日の郷づくり協会 理事長 二木賢治

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