四天王寺散歩「おもかる地蔵」 林 豊
亀の池の北側に“六時堂”というお堂がある。平安時代に天台宗の開祖の最澄が創建したお堂で、比叡山の根本中堂と同じ形で造られた(現在のものは江戸時代の再建)。六時というのは、1日を昼3回、夜3回の計6回に分け、浄土礼讃の行が行われたからで、正式の堂名は“六時礼讃堂”という。
それはともかく、その堂の中央右の縁側に、「おもかる地蔵」と呼ぶ小さな地蔵さんが安置されている。この地蔵さんを持ち上げた重さで、願いが叶うかどうかを占うことができるというもので、軽ければ叶い、重いと願いは遠いという。
地蔵さん自体は結構古いものらしいが、第二次大戦の後、いつの間にか置いてあったとか。占いもいつの頃から、誰が始めたのかよく分からないらしい。京都の伏見稲荷にも、石を持ち上げて占う“おもかる石”というのがあるが、神仏に信心深い人が、可愛い地蔵さんをおもかる石に見立てて持ち上げてみたというのが始まりかも知れない。
林豊氏プロフィール>>>
1939年大阪市生まれ。大阪府職員、編集会社代表を経て、現在フリーライターとして雑誌、PR誌などに執筆の他、歴史・文化講座や講演会の講師を務める。民族芸術学会会員、旅行ペンクラブ会員。著書に『古事記・日本書紀を歩く』『聖徳太子の寺を歩く』(JTBキャンブックス)、『徒然十二支考』(日経大阪PR)ほか。