なにわの詞(ことば)さがし

なにわことばのつどい 中井正明

 

“ぞぉよぉ”
 漢字で雑用と書きまス。大阪弁の字引には、費用、いりよう。国語辞典の入用(いりよう)は……ある用事のために必要、にゅうよう。……そこで入用(にゅうよう)をみると、用をたすために必要なことと書いタァル。何れにもせよ必要経費のことで“なにわいろはかるた(幣会作製の歌留多)”にも“ぞうようかかっても義理せなあかん”の札(ふだ)があり、家計簿予算以外の臨時出費の事とご理解願えたらケッコォー結構だス。序(つい)でにその注釈もしときまひょか。“そらそうだす。どちら様(サン)とも同(オンナ)じ事(コッ)たす。ワテとこも娘、嫁に出した時は、ご町内のお方に、ようお世話になったもんだス。ワイが余(アンマ)り嫁がんからゆうて、そんなご無礼はアキマヘン。一張羅(イッチョウライ)の紋付きはこれで最後や、ヒチヤへもっていってこい。『また働くがな、とに角お付き合いだけは、お前、やっといてんか、なぁ頼んだで、ほんなら、行てくるわ』”こんなとこだすかいな?

“よさり” 
 ……この夜さり、エェ形(なり・衣裳)しゃはって、ド・どちらへ…エヘヘェ、一寸そこまで……。ケナルイ様な会話がおましたなぁ。平安の時代から続く美しい日本語、夜さり(サリは「近づく」意のサルの連用形から)…夜になること、よる。…のことでヤス。竹取や源氏等にも記述されテル、こんな美しい日本語が忘れられて久しい。もう死語になってしもうたンが悲しいね。「よさりだけ、ハッスルしてるこの息子」それにつけても難儀な事、多うオマンナァー。又、朝されば、夕(ゆう)されば…も同意語である。夕されば門田の稲葉おとずれて……偶(たま)には百人一首を繰るのも勉強(ベンキョ)になりまっせ。

“ろぉじ”
 ろじの長音化した大阪弁。路地・露地のことで茶道の露地から出た語であるが、大阪では、裏長屋の細い通路のことを指す。大抵は固有名詞がつかずに、莨(たばこ)屋やら風呂屋薬屋のろぉじで通用したがもう浪花の町中には、この通称が殆どゴワヘン。ロングハウス(長屋)が、現今、立体化してモォタサカイニネェ。素魚の句に「島之内 露地(ロォジ)の数を まちがいへる」がオマス。

「Osakaあらかると」VOL.33 より


 

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