なにわの詞(ことば)さがし

なにわことばのつどい 中井正明

 

“なんぼ”
 戦前は町中が土の路でどこの植え込みも一寸(ちょっと)掘ると 螻蛄(オケラ)が取れた。此奴(こいつ)が子供の遊び相手。「オケラ!! 歳なんぼ?」抓(つま)んでこう言うと、大(オッ)きいお手手(テテ)をヒョイと止めて「拾(トゥオ)」と答えてくれるのが嬉しかったネ。“幾ら・どれ程”等(など)値段や数量に対して使われる大阪弁の中で、一番際立った言葉でンなあ。(何程の略転である。)

“にこごり” 
 寒の朝、冷飯に鯖の煮凝り乗せて戴いたら「何やこの子、猫ミタイな事して」と母に笑われた記憶がおまス。小学校1年生の頃。電気冷蔵庫も無い時代で季節季節に食べ物が変わっていったのも懐かしい。今は真夏にでも在り付けるが
何やら阿呆クサイ気ィがしまス。(鮃(ひらめ)・鮟鱇(あんこう)など膠質に富んだ魚を煮て、煮汁と共に冷(さ)まし凝固させた料理のこと。)

“わんど”
 「アンナァ、鉄ちゃんわんどで鯉釣って来よってんテ」「ホンマカィ、ホタラわいも行コ」淀川の近辺で育った悪童共の会話も遠い昔の話。大きい河の岸辺に出来る水たまり・入江が湾処(わんど)。淀川のわんどに棲息していたイタセンパラ(コイ科)が天然記念物に指定の時代。河川敷の改修もなんか虚しいねぇ。

“こけどっくり”
 「お前(マ)はんも聞いたンかいな彼奴(あいつ)の話」「そうやがな」「ケド気ィ付けや。乗ったらアカンでぇ」「こけどっくり(倒(こ)け徳利)かいな」……こんな噂話、街にはあるもんだス。出まかせ・出放題の洒落(しゃれ)に使う場合(バヤイ)の大阪弁。

“とっかけひっかけ”
 「季節が来ると掛取りが来よりまス、とっかけひっかけ、適(かな)いまへんわ」「そら大変だンなあ」……船場界隈の店主の会話も不景気でつまされる。次から次へと、休みなくの意で取っ掛け引っ掛けと書く。船場の奴(ド)で、季節のことを「積鬼」(掛け金積もると鬼が来よる)と申す社長が居るゾ。

「Osakaあらかると」VOL.30 より


 

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